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2016.11.10 » 6か月 前

[コラム] SOUL OF BLUE #01 未完の大器 宮市亮


近い将来日本の大きな戦力となる、誰もがそう期待していた。

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高校時代、その驚異的なスピードは見る者すべてを魅了した。100mを10秒台で走るそのスピードは、世界でも全く引けを取らない。

多くのアスリートを輩出している地元愛知県の中京大中京高校を卒業とともに、英プレミアリーグの名門アーセナルFCへ入団。加入時には、次のクリスティアーノ・ロナウドと呼ばれ、多くのアーセナルファンを嬉々とさせた。将来を嘱望されていた宮市亮。しかし、ロシアW杯最終予選で苦しんでいる現在の日本代表に、彼の姿はない。

現在彼はブンデスリーガ2部、FCザンクト・パウリに所属している。あれほどの期待をされながら、現在はドイツの2部リーグ。宮市を取材する日本のメディアも徐々に少なくなっていった。

繰り返す故障。移籍先でも本領発揮できず・・・

彼のキャリアは、常に怪我とともに語られる。

移籍後すぐには就労ビザが下りず、かつて小野伸二も所属したオランダ1部のフェイエノールトへ期限付き移籍。そこで1年目ながら3ゴール7アシストと輝きを放ったことで、アーセナルのベンゲル監督からトップチーム入りを明言されるほどにまでなった。アーセナルの申請により特例で就労ビザも取得し、順調にキャリアを重ねるかと思われたが、彼の試練はここから始まる。

同年の11月、試合中に負傷した宮市は長期離脱を余儀なくされた。期待されたトップチームでの活躍はおろか、公式戦での出場はわずかカップ戦での2試合に留まった。尚、負傷した試合もトップチームではなくリザーブリーグでの試合だった。そして翌年1月、同じプレミアリーグのボルトン・ワンダラーズFCへの期限付き移籍が発表された。そこでも初先発の試合で圧倒的なスピードを披露し、初ゴールを決めるなど大器の片鱗は見せるが、やはり故障の影響で本領は発揮できずにいた。5月には日本代表(A代表)に初選出され、初キャップも記録。縦に抜けるスピードは日本サポーターを大いに沸かせた。

翌年には同じくプレミアリーグのウィガン・アスレチックFCへ期限付き移籍。しかしここでは2度の右足首靱帯の損傷に見舞われ、公式戦出場はわずか7試合。サポーターの結果を裏切る結果となった。その翌年、アーセナルに戻り遂にリーグ戦初出場を果たす。しかしそれ以降出場することは叶わず、ハムストリング負傷というまたもや怪我に見舞われ戦線を離脱した。

程なくしてかつて活躍したオランダ1部、FCトゥエンテへのレンタル移籍が決定する。イングランドでは結果は出せなかったが、実績もあるオランダでなら・・・期待を寄せる声も少なくなかった。しかし宮市はここでも結果を残せない。コンスタントに先発出場はするが、外部からの評価は厳しいものばかりだった。やがてここでもトップチームから外されてしまう。そして2015年6月、アーセナルとの契約が解除され、現在のザンクト・パウリに移籍。しかし移籍直後に左膝十字靱帯断裂の大怪我を負い、移籍1年目は棒に振ってしまった。

彼の時系列を追ってきたが、あまりの怪我の多さに私も驚いた。重傷も多い。よく現役を続けられているほどだと思う。ちなみに今シーズンはコンスタントに出場していたが、またも怪我により1ヶ月ほど戦列を離れていた。ザントハウゼン戦でようやく復帰したが、11月1日のニュルンベルク戦で相手選手との接触により脳震盪を起こし途中交代。今回はすぐに復帰できそうだが、本当に怪我の多い選手である。

身体能力の高い日本人選手の宿命か

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過去にも将来を嘱望されながら、その才能に見合ったキャリアを歩めなかった選手がいる。代表的なのはベガルタ仙台などで活躍したFW、財前宣之だ。彼もまた、怪我に悩まされ続けた選手である。財前の世代には、あの中田英寿がいる。その中田も財前を天才と評している。伊ラツィオユース時代にはイタリア代表史に名を残す名DF、アレッサンドロ・ネスタも財前からボールをほとんど奪えなかった。それほどの選手だったにも関わらず、スペイン1部のログロニェス所属中に靱帯断裂のためリーグ戦出場を目前にして無念の帰国。このときまだ19歳であった。帰国後は上述した仙台、モンテディオ山形で活躍は見せるも、世代別代表で見せたパフォーマンスには程遠く、後にA代表に招集されることもなかった。

また、今シーズン途中まで名古屋グランパスを率いた小倉隆史も、五輪代表の合宿中、右足後十字靭帯断裂という選手生命を脅かす大怪我を負って以降大きくパフォーマンスを落としている(復帰にも2年半を要した)。本来であればオランダなど海外のクラブに移籍すると思われていたが、その大怪我の影響でそれも叶わなかった。彼もまた、未完の大器のまま現役を終えた一人である。

日本人は欧米人に比べ骨格で劣っている。あまりに身体能力が高すぎると、日本人の、ましてやまだ若い成長途上の体ではついて行けないという見識もある。怪我により期待されたキャリアが歩めない原因の一つかもしれない。

宮市ももう24歳。未完の大器はキャリアピークを迎えようとしている。

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現在所属しているザンクト・パウリでは、監督のみならず選手の信頼もまずまず得ている。ウィガン時代は監督に、「リョウの最大の長所は笑顔だ」と揶揄されてしまっていたが、これから彼の本領が試されるのだろう。ここまでは決して満足なキャリアが歩めたとは言えない。むしろ、悔しさしか残っていないかもしれない。だが幸いなことに、幾度の大怪我に見舞われながらそのスピードは健在している。怪我が減り、コンスタントに試合に出場できるようになり結果を残せば代表復帰も現実的なものとなる。まだ大器は完成されていない。そのときが来れば、クラブ、そして代表で宮市がかつてない輝きを放ってくれることを私は信じている。延いては2年後のロシアW杯、日本が過去最高の成績を残したとき、その中心メンバーに彼がいることも。何度も挫折を経験した世界でも屈指のスピードスターの逆襲が始まる。

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