サッカーを愛する全てのファンに
2016.12.20 » 3か月 前

[コラム番外編]FIFAクラブW杯を終えて~世界を驚かせた赤い衝撃


王者レアルに対しても貫いた「自分たちのサッカー」

shibasaki220161220

「日本は歴史の差で負けた」

2000年、日本代表がハッサン2世国王杯でフランス代表に2-2、PK戦の末敗れた際にフランスのメディアが報じた見出しの一節だ。私は今回のレアル・マドリードと鹿島アントラーズの一戦を見終わった後、16年前のそんな言葉を少し思い出した。鹿島の石井正忠監督が試合前、「試合開始から自分たちのサッカーをする」と明言していた通り、ラインを押し上げ果敢に攻め上がった。格下の戦い方ではなかった。ビッグネームに臆することなく立ち向かっていった。あのときもらった勇気と感動がフラッシュバックした気がした。

W杯も同じことだが、開催国というだけで厳しい予選を勝ち上がっていないにも関わらず出場できてしまうのは少し申し訳ない気がしないでもなかった。だが、勝てたとしても初戦程度だろう、私のそんな予想は鮮やかに裏切られることになる。初戦のオセアニア王者オークランド・シティに勝利した後、続くアフリカ王者のマメロディ・サンダウンズを2-0、南米王者のアトレティコ・ナシオナルを3-0といずれも完封で撃破した。一番の”誤算”は鹿島のGK曽ヶ端準だった。もちろん昔から安定したキーパーだったし、代表経験も豊富だった。もう何年も鹿島の正GKを張っているだけのことはあり、Jリーグの試合でも安定した守備を見せている。だが、こんなに上手かったのか、というのが準々決勝のマメロディ・サンダウンズ戦、準決勝のアトレティコ・ナシオナル戦を見終わった後の正直な感想だ。決してスコアほど鹿島が圧倒した試合ではなかった。何度もピンチを迎えた。だが曽ヶ端は神懸かったビッグセーブを連発。この大会だけで、何点分を阻止したことだろうか。彼のビッグセーブなくして、鹿島の躍進はあり得なかった。そして決勝でもそのビッグセーブは健在だった。延長までもつれたのも、彼の活躍によるところが大きい。

レアルから2得点の衝撃、「日本のイニエスタ」柴崎岳

shibasaki20161220

この試合、鹿島で最も目立ったのは言うまでもなく柴崎岳である。イギリスのメディアには「日本のイニエスタ」だと賛辞を送られていた。あのレアルから2得点も奪える日本人がいるなんて。スペインのみならず、欧州全体に柴崎岳の名が知れ渡ることとなった。柴崎といえばここ最近は日本代表から遠退いている。同じポジションを争う選手として、長谷部誠、山口蛍、遠藤航、柏木陽介、大島僚太、井手口陽介、そしてチームメイトの永木亮太らがいる。まさに激戦区である。技術面ではこの中でも秀でているが、ハリルホジッチ監督が重視する”デュエル”の部分ではやはり物足りなさを感じる。また、軽率なボールロストが多いこと、フィジカルが弱いことも選出されていない要因だ。

その能力は間違いなく代表クラスだが、やや安定感には欠ける柴崎。今回の活躍で世界中の知名度が飛躍的に上がった。欧州クラブからのオファーも来ることだろう。24歳というサッカー選手としては決して若くはない年齢だが、更なる成長を目指して欧州に挑戦してもらいたい。

足りなかったのは前線のクオリティ

shoji20161220

ボランチを務めた永木亮太と小笠原満男のコンビは絶妙だった。特に永木はその高い技術力もさることながらハードワークも辞さない。ハリルホジッチ監督が好きなタイプの選手だろう。円熟味を増した小笠原も安定したプレーを見せた。後半途中で退きはしたが、やはり鹿島に欠かせない選手だと改めて実感させられた。守備陣も奮闘した。センターバックの昌子源、植田直通のコンビである。特に昌子はクリスティアーノ・ロナウドを徹底マークし、何度も侵入を防いだ。延長こそ緊張の糸が切れたように守備陣が崩れてしまったが、90分間見せてくれたあの守備は、さすがのレアルも手を焼くほどだった。

足りなかったのはフィニッシュの部分だけだった。相手陣内深くまで攻め込むも、ラストパスが合わない、シュートまで持ち込めても決めきれない。あそこで決めていたら…というのは日本代表の試合でも多すぎるほどある。今回の試合でいえば、後半終了間際の遠藤康のシュートや絶妙なタイミングで裏に抜け出した後の金崎のシュートである。あれが世界との差そのものなのだろう。勝利が目の前にありながら、自ら逃す結果となってしまった。日本の永遠の課題である決定力不足、それを克服できるときはまだ来ないのだろうか。

今大会導入されたVAR(Video Assistant Referees)

kashima20161220

さて、今大会でもう一つ触れておきたい話題がある。物議を醸しているVAR(Video Assistant Referees)、つまりはビデオ判定である。これまでもゴールラインを割ったかどうか判定するゴールラインテクノロジーや、両エンドのゴールライン上に更に審判を配置する追加副審などは既に導入されてきた。このVARは、ペナルティーエリア内でのファウル、レッドカードの判定など、試合を左右し得る重要な判定について、ビデオ判定室に控えている映像副審が主審に無線で申告するというものである。FIFA主催大会では初の導入となった。

ではなぜ際どい判定やミスジャッジを防ぐために導入されたこのシステムが物議を醸しているのかというと、やはり試合の流れを止めてしまうからである。サッカーというスポーツは、既にビデオ判定が導入されている野球やテニス、バレーボール等とは違い、ハーフタイムを除き試合中は常に時間が流れている。選手の負傷や抗議などで一時的に試合が止まることはあるが、他のスポーツのように明確なインターバルがあるわけではない。そんな中ビデオ判定で試合を止めてしまっては、選手も試合に集中できなくなり、流れが相手に傾いてしまう可能性だってある。レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督やルカ・モドリッチ、カリム・ベンゼマらも、このVARに対し不満の声をもらした。また、見る側にとっても賛否両論あり、正しくジャッジされるのはいいが、サッカーの大きな魅力であるスピード感が損なわれることが懸念されている。

2年後のロシアW杯での本格導入を目指しているこのVAR。現段階では課題が山積している上、選手やファンの賛同も得ているとは言い難いが、誤審がなくなること自体には誰もが賛成している。試験を重ねながら課題をクリアしていってもらいたいものである。

来年、再来年はUAEにて開催。Jリーグクラブの活躍が期待される

昨年、今年と日本で開催されたFIFAクラブW杯だが、来年、再来年はUAEで開催される。したがってJクラブはAFCを優勝する以外に出場はできないのだ。今大会の鹿島の大躍進が、ホームアドバンテージがあったからだと言われてしまわないためにも、来年出場するJクラブがAFCを制し、クラブW杯でまた世界を驚かせる戦いを見せてほしいものである。そして近い将来、日本のクラブは強くて当たり前、というのが世界の常識になる日が来ることを期待している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です